
前の記事では、仮想美容室を通して「リピートされない構造」を具体化しました。
そこで出てくる問いがあります。
では、どうやって「選ばれる理由」を見つければいいのか?
今回は思想ではなく、具体的な手順を整理します。
この回の目的はひとつです。
読み終わったあと自分のお店で実際に手を動かせる状態になることです。
前提|選ばれる理由は「作る」のではなく「発見する」
まず大前提です。
選ばれる理由はコンセプト会議で考えるものではなくキャッチコピーから逆算するものでもありません。
それはすでに起きている選択行動の中にあります。
だから「強みは何だろう?」と考え始めるのは順番が逆です。
やるべきことはどこでズレたのかを特定することです。
ステップ①|「来なくなった人」を具体的に書き出す
まずやることは抽象的な分析ではありません。
直近3ヶ月で来なくなったお客さんを最低5人思い出してください。
そして次の質問に答えてください。
・その人は初回来店時に何を求めていましたか?
・どんな言葉を使っていましたか?
・仕上がりに対してどんな反応をしていましたか?
・「また来ます」と言いましたか?その温度感は?
ここで重要なのは不満を探すことではありません。
多くの場合悪くはない。でも「思っていたほどではない」という判断が起きています。
ここで探すべきなのは体験と期待のズレの正体です。
ステップ②|その人は「何を期待して来ていたのか」を分解する
次にやるのはその人が何を期待して来ていたのかを体験単位で言語化することです。
抽象語は使いません。
× 雰囲気がよさそう
× 接客が丁寧そう
ではなく、
・どんな仕上がりを想像していたのか
・どんな提案を期待していたのか
・どこまで踏み込んでほしかったのか
・再現性まで考えてほしかったのか
期待は必ず具体です。
たとえば「似合わせを提案してほしかった」「自分では思いつかない変化がほしかった」「失敗だけは絶対に避けたかった」。
ここまで言語化できると選ばれる理由の材料が見えてきます。
ステップ③|自分が実際に提供している体験を書き出す
次に現実を冷静に整理します。
今あなたのお店はどこまで提案していますか?どこまで踏み込んでいますか?どこまで責任を持っていますか?
具体的に書き出してください。
例として要望どおりには仕上げられる。失敗はしない。でも積極的な提案はしていない。
ここで見えてくるのは能力の問題ではありません。
期待と提供体験の不一致です。
多くの店舗はここで「提案力を上げよう」と方向転換します。しかしそれが本当に必要かは次のステップで判断します。
ステップ④|「静かに通い続けている人」を分析する
次にやるのは逆です。
1年以上通っているお客さんを3人〜5人思い出してください。
そして書き出します。
・その人はなぜあなたのお店を選び続けていますか?
・何を期待して来ていますか?
・どんな言葉をよく使いますか?
ここが最重要です。
大きなリアクションはない。派手な口コミもない。でも離れない。
この人たちは期待と体験が一致しています。
その一致点こそがあなたのお店の核です。
ステップ⑤|3Cは最後に使う
ここまで整理してから初めて3Cを使います。
多くの店舗は最初に競合や価格を見ます。しかしそれでは軸が定まらず、他店との差別化という名の消耗戦に入ってしまいます。
3Cは「見つけるため」ではなく「磨くため」に使います。
まずCustomerです。
見るべきは市場全体ではなく、ステップ④で整理した実際に残っているお客さんです。
・どんな期待を持って来ているのか
・どんな体験を評価しているのか
・なぜ他店ではなくあなたを選んでいるのか
次にCompanyです。
ここで重要なのは「できること」ではなく「再現できること」です。
・無理なく続けられる体験は何か
・スタッフ全員が再現できる型はあるか
・言語化できているか
一時的に頑張ればできることは強みではありません。安定して出せる体験だけが強みになります。
最後にCompetitorです。
比較するのは価格やメニューではありません。比べるのは「期待の種類」です。
競合は変化提案型なのか。トレンド追求型なのか。価格訴求型なのか。安心安定型なのか。
あなたが取りにいく期待はどれなのか。
3Cは立ち位置を明確にする工程です。起点ではありません。
ステップ⑥|選ばれる理由を一文にする
ここまで来てようやく言語化します。
このとき急に抽象化してはいけません。
残っている人の期待。自分が無理なく提供できる体験。競合とズレているポイント。この3つが重なった部分を一文にします。
条件は3つです。
・技術の話になっていない
・抽象語で逃げていない
・接客と発信に落とせる
「技術力が高い美容室」「提案力がある美容室」は特徴であって選ばれる理由ではありません。
「大きく冒険はしないが失敗しない着地点を一緒に作ってくれる美容室」。
この一文が発信の軸になりカウンセリングの前提になり仕上げ説明の基準になります。
最後に確認してください。
その一文はスタッフが説明できますか。お客さんが聞いて納得できますか。次回予約の会話につながりますか。
つながらないならまだ抽象です。
一文はスローガンではありません。現場で使える判断基準です。
まとめ|順番を守ることがすべて
選ばれる理由は分析から生まれるものではありません。
お客さんの期待と自店が無理なく提供できる体験が一致している点から発見されるものです。
だから順番はこうです。
- 来なくなった人を具体化する
- 期待を分解する
- 提供体験を書き出す
- 通い続けている人を見る
- 3Cで整理する
- 最後に一文化する
この順番を守ることであとからブレない「選ばれる理由」が見えてきます。
そしてそれは無理に作った強みではなくすでにあなたの現場にあるものです。
