
「新規のお客さんさえ増えれば、お店はうまくいくはず」
多くのオーナーさんが、どこかでそう考えているのではないでしょうか。
ところが実際は、お客様は増えているのに、売上が安定しないお店は少なくありません。
広告も出している。集客も頑張っている。それなのに、なぜか落ち着かない。
その原因の多くは、新規集客に頼りすぎて、リピーターを生む “仕組み” がないことにあります。
この記事では、
- リピーターとは何か
- なぜその定義が重要なのか
- 定義を間違えると、経営にどんな影響が出るのか
- だからこそ、なぜリピーターがお店にとって重要なのか
について、一度立ち止まって整理します。
リピーターとは何か?多くのお店が見落としている前提
「うちのお店はリピーターが多いです」
そう話されるお店でも、詳しく聞いてみると、2回目は来てくれているものの、その後は続いていない。そんなケースはよくあります。
「2回目に来てくれているなら大丈夫」
「あとは新規集客を頑張ればいい」
そう判断してしまうと、いつまでも集客に追われる経営から抜け出せません。
リピーターとは、あなたのお店を “選び続ける理由” を持ったお客さんのこと
重要なのは、「もう一度来たかどうか」ではなく、「なぜ、また来たいと思ったのか」 です。
2回目に来てくれたとしても、理由が曖昧なままでは、その関係は長く続きません。
3回、5回、10回と通ってくれるお客さんには、必ず “選び続ける理由” があります。
この違いが、売上が安定するお店と、いつまでも不安定なお店を分けています。
ここで一度、考えてみてください。
今、あなたのお店に通い続けてくれているお客さんは、なぜ数ある選択肢の中から、あなたのお店を選び続けているのでしょうか。
「また来た」ではなく “選び続ける理由” が重要な理由
この話をすると、「じゃあ、数字は見なくていいのか?」と感じる方もいるかもしれません。
ですが、ここで誤解してほしくないのは、「数字を見るな」という話ではない、ということです。
むしろ、
- 3回目
- 4回目
- 5回目
と、どれだけ継続して来てもらえているかを数字で把握することは、とても重要です。
問題なのは、「2回目に来たかどうか」だけでリピーターを判断してしまうことです。
たとえば、たまたま見つけた素敵なレストラン。
料理に満足して「また行きたい」と思い、実際にもう一度足を運んだとしても、意外と2回目で止まってしまうお店は少なくありません。
味も悪くないし、接客も問題ない。
「まぁ、こんな感じだよね」と納得して満足する。
それでも、次に行く理由が思い浮かばない。
これは、そのお店が悪いわけではありません。
多くの場合、お店を “選び続ける理由” が、まだ言語化・設計されていないだけなんです。
だから大切なのは、2回目に来たかどうかで判断するのではなく、その先も選ばれ続けているかどうか、という視点です。
なぜリピーターがお店にとって大事なのか?
それでは、リピーターが多いと、お店にはどんな変化が起きるのでしょうか。
代表的なポイントを整理します。
1. 利益率が上がりやすくなる(1:5の法則)
一般的に、新規のお客さんを獲得するコストは、既存のお客さんを維持するコストの5倍かかると言われています。
新規集客に追われ続けると、広告費や手間ばかりが増えて、なかなか利益が残りません。
リピーターが増えれば、広告費は自然と下がり、利益率は改善していきます。
2. 来月の売上が見えて、経営が安定する
新規集客にはどうしても波があります。
一方で、リピーターには一定の来店サイクルがあります。
そのため、リピーターが多いお店ほど、「来月の売上がある程度読める」状態になります。
これは、経営者にとって大きな安心材料です。
売上が予測できる状態は、次の一手を考える余裕にもつながります。
3. お客さんへの理解が深まり、満足度が自然と上がる
来店を重ねるなかで、
- 好み
- 目的
- 過去の選択
- 来店周期
といった情報が自然と蓄積されていきます。
すると、提案の精度が上がり、サービスの改善点も見えやすくなります。
結果として、満足度が高まり、リピートや口コミにつながっていきます。
4. スタッフが辞めにくくなる
初対面のお客さんばかりの環境では、スタッフの接客負担はどうしても大きくなります。
リピーターが多いお店では、「わかってくれているお客さん」が増えて、接客のストレスが大きく下がります。
職場の空気が落ち着き、結果として離職率も下がっていきます。
5. オーナーの負担が軽くなる
新規集客に依存した経営では、常に数字に追われがちです。
リピーター中心の経営になると、改善や戦略を考える時間が生まれ、経営の視点そのものが変わります。
時間と心の余裕は、お店全体の空気にも良い影響を与えます。
選ばれ続けているお店に共通していること
常連が多いお店というと「サービスが特別すごい店」「価格が一番安い店」を想像されることも多いかもしれません。
ですが、実際に選ばれ続けているお店を見ていると、必ずしもそうとは限りません。
私が考える、常連が多いお店の共通点は、「なぜこのお店なのか」という理由や、お客様が期待していることを理解し、それを磨き続けていることです。
言い換えると、お客様がそのお店に求めている価値に対して、施策の方向性を合わせ続けている、ということです。
たとえば、
- 「価格」で選ばれているお店であれば、いかにその価格を維持できるかを考え、コスト構造の見直しを続けています。
- 「サービスの品質」で選ばれているお店であれば、その品質が落ちないよう、日々の改善を積み重ねています。
- 「立地」で選ばれているお店であれば、遠方に無理にアピールするのではなく、地元での認知や来店理由を強化しています。
- 「人」で選ばれているお店であれば、スタッフを頻繁に入れ替えることなく、お客様とのコミュニケーションを大切にしています。
どのお店にも、お客様が「ここを選んでいる理由」があります。
選ばれ続けているお店は、その理由に合った施策を打ち続けているからこそ、結果として常連が増えていくのだと考えています。
よくある勘違い|満足=次も来る、ではない
ここで、ひとつ整理しておきたいことがあります。
多くのお店では、「満足してもらえれば、次も来てくれるはず」と考えがちです。
ですが実際は、満足したからといって、必ずしも次も選ばれるとは限りません。
満足は、あくまで前提条件です。
そこに、「次もこのお店を選ぶ理由」 がなければ、人は簡単に別の選択肢へ移ってしまいます。
まとめ|回数ではなく “理由” に目を向ける
リピーターとは、「あなたのお店を “選び続ける理由” を持ったお客さん」 のことです。
数字を見ること自体が問題なのではありません。
大切なのは、回数の奥にある “選ばれている理由” を見ようとすることです。
まずは、今通ってくれているお客さんを思い浮かべてみてください。
なぜ、数ある選択肢のなかで、あなたのお店を選び続けてくれているのか。
その理由に目を向けることが、売上を安定させるための、最初の一歩になります。
