
ここまでの記事では、リピーターが増えない理由、人が同じお店を選び続ける心理、そして「選ばれ続けるための設計」を順番に整理してきました。
そこで見えてきたのは、リピートは「気合」や「施策の量」ではなく、お客さんの選び方に合わせた設計の問題だということです。
ただし、ここでひとつ補足しておきたい点があります。
それは、その設計が「どの業種でも同じ形で当てはまるわけではない」ということです。
同じ「リピーターづくり」でも、飲食店・美容室・美容エステでは、思い出され方、比較のされ方、リピートの起き方が大きく変わります。
今回はその前提を揃えるために、サービス特性を整理したうえで、業種ごとのリピート設計の考え方を見えやすくします。
サービス特性を3つの軸で整理する
まず前提として、サービスを次の3つの軸で捉えます。
この整理をすると、同じ「リピート」という言葉でも、何を設計すべきかがズレにくくなります。
- 単価:高いか/低いか
- 頻度:来店頻度が高いか/低いか
- 必需性:行かないと困るかどうか
この組み合わせによって、お客さんの選び方(比較のしやすさ/失敗したときの痛み/先延ばしのしやすさ)が変わり、結果としてリピートの起き方も変わります。
① 低単価・高頻度・必需性が高いサービス(例:飲食店)
飲食店の特徴は、「そのお店」ではなく「食事という行為そのもの」が生活に組み込まれている点にあります。
人は毎日食事をしますが、毎回ゼロからお店を探しているわけではありません。
多くの場合、よく行く店や、だいたい決まっている選択肢がすでに頭の中にあります。
一方で、新しいお店を探すのは、特別な日、気分を変えたいとき、新しさを感じたいときなど、非日常のタイミングになりやすいです。
つまり飲食店は、日常の「固定枠」と、非日常の「探索」が同時に起きる業種です。
初回来店で起きていること
飲食店で重要になりやすいのは、初回で強い印象を残せるか、そして「この店は〇〇が良い」と記憶のラベルが貼られるかです。
たとえば初回のナポリタンが美味しければ、「この店はイタリアンが良い」「きっとピザも美味しいはず」と想像が広がります。
ここでは感動の有無というより、印象が「ジャンルの代表記憶」になるかどうかが分かれ道になります。
忘れられるリスクが高いタイミング
飲食店で忘れられやすいのは、初回来店〜2回目までで止まっている状態です。
この段階は競合が多く、日常の中で他店の情報が自然に入ってくるため、印象が弱いと上書きされやすくなります。
飲食店におけるリピート設計の考え方
飲食店では、商品型の価値(味・安定感・看板メニュー)を軸にしながら、リピートの広げ方を3つに分解して設計すると整理しやすくなります。
- 同経験:同じ店・同じメニューを選ぶ
- 異経験:人を連れてくる(利用シーンが増える)
- 時系列:別メニュー・季節限定・新作で理由が生まれる
SNSや告知は、宣伝の量を増やすためというより、「そういえば、あの店だったな」と思い出してもらうための装置として設計すると機能しやすくなります。
クーポンやポイントカードも同様で、「行くきっかけ」をつくる手段として位置づけるとズレが減ります。
② 高単価・低頻度・必需性が高いサービス(例:美容室)
美容室は、定期的に必要である一方、失敗したくないという心理が強く、比較コストが高いサービスです。
頻度は飲食ほど高くないため、日常の中で「選び直し」が頻繁に起きるわけではありません。
その代わり、いったん不安が生まれると、次回の予約前に一気に比較が始まりやすいという特徴があります。
選ばれる理由の変化
美容室では、選ばれる理由が時間とともに移行していくケースが多く見られます。
整理としては、次の順番で捉えると見えやすくなります。
- 地理型(近い・通いやすい)
- 商品型(技術・仕上がりが安定している)
- 属人型(この人に任せたい)
たとえば、来店後の一言、髪の悩みへの丁寧な説明、次回の提案がわかりやすい、といった体験が積み重なると、「この店はちゃんとしている」という商品型の価値が上がります。
そのうえで「話しやすい」「任せやすい」という感覚が育つと、属人型へ移行していきます。
この移行が起きると、比較そのものが減り、リピートが安定しやすくなります。
美容室におけるLINE・DMの役割
LINEやDMは、売り込むためのものというより、思い出してもらうための装置として捉えるとズレが減ります。
「そろそろかな」と思ったとき、ふと髪が気になったときに、「あのお店、丁寧だったな」「あの人、感じ良かったな」と想起できる状態を支える役割です。
つまり、美容室では“きっかけ”だけでなく、“何を思い出すか”が重要になります。
③ 高単価・低頻度・非必需サービス(例:美容エステ)
美容エステは、今すぐ行かなくても困らない(先延ばしできる)サービスです。
さらに効果が見えにくいケースもあり、継続の理由づけが必要になりやすいという特性があります。
そのため、この領域では「同経験のリピート」を意味づけできるかが重要になります。
美容エステにおけるリピート設計
美容エステでは、初回体験での安心感に加えて、アフターサポートによって商品型の価値を高める設計が有効になりやすいです。
たとえば、セルフケアの指導、悩み相談への対応、小さな変化の共有などです。
これらは劇的な感動を狙うというより、「続ける納得」を積み上げるための材料になります。
また、メニューの時系列設計(脱毛→美肌ケア、フェイシャル→ボディなど)を組みやすいのも、このタイプの特徴です。
次に何をするかが見えると、継続が“習慣”として成立しやすくなります。
まとめ|設計は「同じ」ではなく「合わせる」
リピーターづくりの考え方そのものは共通しています。
初回体験で期待に応えること、選ばれている理由をズラさないこと、思い出すきっかけを用意することです。
ただし、具体的なやり方はサービス特性によって変わります。
大切なのは「どの業種でも同じことをやる」ではなく、「このサービスでは、どう選ばれているのか」「どう思い出されるのか」から設計を組み立てることです。
