
これまでの記事では、満足していても通い続けるとは限らないこと、多くの離脱は「不満」ではなく「忘れられる」ことで起きていること、思い出されるにはきっかけだけでなく「何を思い出すか」が重要であること、そしてその中身は、お店が選ばれている理由そのものであることを整理してきました。
ここまでを踏まえると、リピートは偶然起きているわけではなく、お客さんの心理の流れに合わせて設計された結果として起きている、ということが見えてきます。
選ばれ続ける店に共通しているのは「導線の順番」
常連が多いお店というと、センスがいい、特別なサービスをしている、カリスマ的なスタッフがいる、といったイメージを持たれることもあります。しかし実際に多くの店舗を見ていると、決定的な違いはそこではありません。
お客さんの心理に合わせた導線を、順番どおりに設計しているかどうか。それだけです。逆に言えば、この順番を崩すと、どんなに施策を重ねてもリピートは不安定になります。
選ばれ続けるために意識すべき3つの設計
お店側が意識すべき設計は、次の3つです。
- 初回体験で期待に応える
- お店が選ばれている理由を印象に残す
- また行きたくなる目的と、思い出すきっかけを用意する
それぞれを順番に見ていきます。
① 初回体験で期待に応える
すべての前提になるのが、初回体験です。ここで重要なのは、感動させることだけではありません。
大切なのは、サービスの品質が期待に届いているか、想像していたクオリティとズレていないか、不安や違和感が残っていないかという点です。初回で「なんか違った」「思っていたほどではなかった」と感じられてしまうと、その後にどんな施策をしても意味を持ちません。
リピートが起きない最大の理由は、初回体験で期待を外していることです。ここは施策ではなく、すべての土台になります。
② お店が選ばれている理由を印象に残す
初回で満足してもらえたとしても、それだけで通い続けてもらえるわけではありません。重要なのは、「このお店は何が良かったのか」が、お客さんの中に残っているかどうかです。
ここでいう「良さ」は、近くて便利、技術が安定している、居心地がいい、この人に任せたい、など人によって違います。大切なのは、今、何で選ばれているのかをズラさないことです。
たとえば、近さで選ばれているのに急に世界観や高級感を強く押し出したり、技術で評価されているのに無理に距離感の近い接客を増やしたりすると、お客さんの印象は一気にぼやけます。「悪くはないけど、なんか違う」という状態になると、次に思い出されなくなります。
③ また行きたくなる目的と、思い出すきっかけを用意する
満足し、選ばれている理由が印象として残っていても、また行く理由やタイミングがなければ来店は起きません。ここで必要になるのが、何をしにまた行くのかという「目的」と、どんな場面で思い出せばいいのかという「きっかけ」です。
たとえば、メンテナンスのタイミング、季節の変わり目、イベント前、定期的なケアなどは、お客さんの生活の中に自然に組み込める目的です。SNSやLINEの役割は、新しい価値を押しつけることではありません。「そういえば、あのお店だったな」と思い出してもらうための装置です。
ただし、②で印象が残っていなければ、どれだけきっかけを用意しても思い出されません。
リピートは、施策の結果ではない
ここまでを整理すると、リピートは、クーポンを出したから、キャンペーンを打ったから、SNSを頑張ったから起きるものではない、ということがはっきりしてきます。
「このジャンルなら、ここがいい」「自分にとっては、この店で十分だ」と思ってもらえた結果として、自然に起きているものです。施策は、その状態をつくるための手段にすぎません。
まとめ|設計すべきは「お客さんの選び方」
選ばれ続けるお店は、初回で期待を外さず、選ばれている理由をズラさず、また行く目的と思い出すきっかけを用意しています。それだけです。
才能やセンスの話ではありません。お客さんが、どんな順番で感じ、判断し、「ここがいい」と決めているのか。そこに合わせて設計できているかどうか。それが、選ばれ続けるお店と、そうでないお店を分けています。
