
①の記事では、「満足していても、選ばれ続けるとは限らない」ことを整理しました。②の記事では、人は「もっと良い店があるかもしれない」と思いながらも、これまでに出会った選択肢の中で「ここで十分だ」と思えた店に戻っている、という判断の仕組みを整理しました。
ここまでで見えてきたのは、リピートが「気分」や「偶然」で起きているのではなく、納得と安心が積み重なった結果として、判断をしなくて済む状態が生まれているということです。では、ここで一つ、もう一段だけ踏み込みたい問いがあります。
「ここで十分だ」という感覚は、どこから生まれているのか?
「ここなら間違いない」「わざわざ他を探さなくていい」。そう感じる理由は、実は人によってまったく違います。近いから、通いやすいから、ちゃんとしているから、この人に任せたいから、もう他を考えなくなったから。同じように通ってくれているお客さんでも、選んでいる理由は必ずしも同じではありません。
「リピーターが多い」という言葉が曖昧になる理由
店舗オーナーさんからよく聞く言葉があります。「うちは、リピーターが多いんです」。ただ、詳しく話を聞いてみると、近いから来ている人、価格が合うから来ている人、人との関係で来ている人が、同じ「リピーター」という言葉で一括りにされていることが少なくありません。
しかし、選んでいる理由が違えば、期待していることも、評価のポイントも変わります。ここを整理しないまま施策を考えると、「やっているのに、なぜか積み上がらない」状態が起きやすくなります。クーポンの反応が薄い。新しいサービスを作っても広がらない。SNSを頑張っても手応えがない。こうした現象は、施策の優劣というより、前提がズレていることで起きていることが多いのです。
お店が選ばれている理由は、大きく4つに分けられる
ここからは、お客さんがあなたのお店を選び続けている理由を、4つの型に分けて整理します。これは、お客さんを分類するためでも、優劣をつけるためでもありません。今どんな理由で選ばれているのかを、お店側が正しく理解するための整理です。
① 地理型|条件が合っているから
この段階では、お店そのものよりも、条件や利便性が選ばれている状態です。近い、通いやすい、立地や時間がちょうどいい。ここで求められているのは、「迷わず行ける」「失敗しなさそう」と感じられる安心感です。
② 商品型|ちゃんとしているから
何度か利用する中で、「ここは外さない」「ちゃんとしている」と感じるようになると、比較や検討の手間が減っていきます。技術や品質が安定している。期待を裏切らない。この段階では、体験そのものの信頼性が理由になっています。
③ 属人型|この人に任せたいから
サービスそのものだけでなく、人との関係性が理由になっている状態です。接客が心地よい。話が通じる。任せやすい。この型では、スタッフの入れ替わりや対応のブレが、リピートに大きく影響します。
④ 記憶型|もう他を考えなくなったから
この段階では、「このジャンルならここ」という形で、比較する意味がなくなっています。選んでいるというより、思い出した瞬間に決まっている状態です。お店は「選択肢」ではなく、前提になっています。
これは「お客さんの性格分類」ではない
ここで大事な補足をしておきます。地理型の人、商品型の人、属人型の人、といった性格分類をしているわけではありません。同じお客さんでも、最初は地理型として来店し、体験の積み重ねで商品型になり、関係性が育って属人型になる、といった変化は普通に起きます。
一方で、ずっと地理型のまま通い続ける方もいますし、商品型で十分満足している方もいます。どれが良い悪いではなく、「今どの理由で選ばれているか」が重要です。
大切なのは「今、何で選ばれているか」
ここで一番重要なのは、無理に別の型へ移行させることではありません。大切なのは、今どんな理由で選ばれているのか、お客さんは何を期待して来ているのかを、お店側が正しく理解しているかどうかです。
理由を取り違えたまま施策を打つと、期待とズレた提案をしてしまう。本来の強みがぼやけてしまう。「悪くないけど、いまいち」が増える。こうした状態が起きやすくなります。
まず1つだけ「仮で」決めてみてください
ここで一度、あなたのお店の状況に引き寄せて考えてみてください。今、あなたのお店は「何で選ばれている」でしょうか。4つすべてを正確に当てる必要はありません。
まずは、「いちばん多い理由はこれかもしれない」というものを、1つだけ仮で決めてみてください。この仮決めがあるだけで、次に打つ施策のズレが大きく減ります。
まとめ|理由を理解すると、設計の方向が見えてくる
リピートを増やすために、いきなり新しい施策を足す必要はありません。まずは、今何が理由で選ばれているのか。その理由に、ちゃんと応えられているのか。ここを整理することが先です。
お店は、選ばれている理由に合わせて、やることを決める必要があります。
次の記事では、この「理由」を前提にして、お客さんは何をしにあなたのお店にまた来ているのか。リピートの「目的」を、時系列で整理していきます。
